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第93話 それでもステージに

Author: 秋宮千砂
last update publish date: 2026-08-30 19:03:00

 救護スタッフが到着すると、水琴はすぐに控室の奥へ移された。

 靴下を脱がせると、足の裏にはカミソリが触れた箇所から細長く傷が走っていた。幸い傷は深くなく、救急搬送が必要な状態ではないという。

 それを聞いた瞬間、颯馬の肩からわずかに力が抜けた。

 けれど、それはあくまで日常生活を送るなら、という話だった。

「傷そのものは深くありません。ただ、足の裏なので、体重をかけるとかなり痛むと思います」

 救護スタッフが傷口を消毒し、止血の処置をする。

 消毒液が触れた途端、水琴の足先が強張った。

「痛い?」

 颯馬が尋ねる。

「これくらい平気」

 そう答えた顔は、平気には見えなかった。

 処置を終えると、水琴は椅子の背に手をついて立ち上がった。

「ちょっと歩いてみます」

「無理しないでください」

「はい」

 右足を床につき、続いて傷のある足に体重を移す。

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